自己破産の手続きを進める中で、よく出てくる用語が「管財事件」「同時廃止」「免責不許可事由」など。
これらは裁判所が手続きの内容や進め方を決めるうえで非常に重要な要素です。
この記事では、自己破産に関する下記の項目を具体的に解説していきます。
- 管財事件と同時廃止の違い
- 免責不許可事由とその回避方法
- 自由財産とは?何が残せるのか
- 自由財産の拡張の考え方
1. 自己破産の2つの処理方法:「同時廃止」と「管財事件」
● 同時廃止とは?
「同時廃止」は、債務者にめぼしい財産がない場合に、破産手続と同時に破産管財人の選任を省略して処理する簡易な手続きです。
つまり、「取り立てる財産もないし、調査もいらないよね」と裁判所が判断した場合です。
同時廃止の条件
- 財産がほとんどない(自由財産のみ)
- 免責不許可事由がない、または軽微
- 複雑な事情がなく、調査の必要がない
● 管財事件とは?
管財事件とは、債務者に一定以上の財産や問題点がある場合、破産管財人が選任される正式な手続きです。
管財人は、債務者の財産の管理・売却、免責調査などを行います。
管財事件になる主なケース
- 20万円以上の財産(車、株、貴金属など)を所有している
- 免責不許可事由がある(浪費・ギャンブルなど)
- 法人代表者の自己破産
- 収支や資産状況に不明点がある
管財事件になると費用が高くなり(20万円~)、期間も長くなります。
2. 免責不許可事由とは?どんなケースで自己破産が認められないのか
自己破産を申し立てたからといって、必ず免責(借金が帳消しになる)されるわけではありません。
以下のような行為があると、免責不許可事由として判断されることがあります。
代表的な免責不許可事由
- ギャンブルや浪費による借金
- クレジットカードの現金化
- 財産隠し・偏った返済(親や特定の業者にだけ返済)
- 虚偽の申告(財産や収入をごまかす)
- すでに免責を受けてから7年以内の再申立て
● 免責不許可事由があっても「裁量免責」の可能性あり
反省の姿勢や生活再建への意思が明確であれば、裁判所の判断で免責が認められる(裁量免責)ことがあります。
弁護士が的確に主張・立証してくれることが重要です。
3. 自己破産でも残せる「自由財産」とは?
破産手続きにおいても、生活に必要な最低限の財産は処分されません。
これを「自由財産」と呼びます。
自由財産の主な内容
- 99万円までの現金
- 差し押さえが禁止されている年金・生活保護費
- 衣類・家具・冷蔵庫・洗濯機など生活必需品
- 20万円以下の預金口座の残高
- 退職金(8分の1相当までは自由財産として認められる場合あり)
4. 自由財産の「拡張」が認められるケースとは?
本来であれば処分される財産であっても、事情を考慮して「自由財産の拡張」が認められることがあります。
たとえば:
- 障害のある子どもの介護用の車
- 自営業のための最低限の仕事道具
- 通勤のために必要な車(ローンなしで20万円程度の価値)
この拡張を認めるかどうかは裁判所の裁量になります。必要性や生活の実情をしっかり説明しましょう。
まとめ:自己破産は「正しい理解」と「準備」がカギ
自己破産は借金問題をゼロからリセットできる大きな制度です。
しかし、財産の有無や借金理由によって手続きの種類や結果が変わります。
・管財事件になると費用も時間も増える
・免責不許可事由があっても、裁量免責で救われる可能性あり
・財産がすべて取られるわけではない。自由財産が守られる
自分の状況に合った選択と、信頼できる専門家への相談が何より重要です。