債務整理を考えているとき、気になるのが「弁護士費用」。
実は弁護士の報酬には全国一律の基準はなく、それぞれの弁護士や事務所ごとに報酬の基準があります。そのため、同じような内容の依頼でも、費用に差が出ることがあります。
しかし、過去には一部の弁護士によって、高額な費用請求や不適切な事件処理が行われていたため、日本弁護士連合会(日弁連)は2011年に「債務整理事件処理の規律を定める規程(ルール)」を作りました。
この記事では、そのルールの概要や報酬の上限、弁護士が守るべき義務などを、わかりやすく解説します。
1. どんな事件が対象になる?
このルールが適用されるのは、主に以下のような事件です:
- 消費者や個人事業者による任意整理
- 過払い金返還請求を含む債務整理
※ 破産や民事再生はこの規程の「報酬規制」の対象外ですが、処理方法のルールは一部共通です。
2. 弁護士が守るべき5つの基本ルール
- 面談の義務
弁護士は、依頼を受ける前に本人と直接面談して事情を聞く必要があります。 - 分かりやすい説明義務
処理方針や弁護士費用、不利益となる可能性について、弁護士本人が丁寧に説明しなければなりません。 - 受任弁護士の明示
担当弁護士の氏名などを依頼者に明示する必要があります。 - 過払い請求だけの「つまみ食い」はNG
借金全体の整理をせずに過払い金だけを回収する依頼は原則として受けられません。 - 進捗や結果の報告
弁護士は、事件処理の状況や結果を依頼者に報告する義務があります。
3. 弁護士報酬の種類とルール
■ 主な報酬の内訳
区分 | 内容 |
---|---|
着手金 | 依頼時に支払う基本料金。成功・不成功に関係なく発生 |
解決報酬金 | 債権者との交渉が成立したときに発生 |
減額報酬金 | 借金を減額できたときの成功報酬(減額分の○%) |
過払い報酬金 | 過払い金を回収できた場合の成功報酬(回収額の○%) |
■ 上限規制(非事業者等の任意整理)
- 解決報酬金:1社あたり2万円以下(商工ローンは5万円以下)
- 減額報酬金:減額分の10%以下
- 過払い金報酬金:
- 裁判なし:回収額の20%以下
- 裁判あり:回収額の25%以下
■ 追加手数料は禁止
管理手数料や引き直し計算手数料など、余分な名目での費用請求は禁止されています。
4. 具体例でシミュレーション
例)Xさんのケース
- A社:請求50万円 → 過払い30万円回収(裁判なし)
- B社:請求70万円 → 50万円に減額
A社への報酬(上限の場合)
- 解決報酬金:2万円
- 減額報酬金:5万円(50万円の10%)
- 過払い報酬金:6万円(30万円の20%)
- 計:13万円+消費税
B社への報酬(上限の場合)
- 解決報酬金:2万円
- 減額報酬金:2万円(20万円の10%)
- 計:4万円+消費税
5. 広告にもルールがある
- 報酬基準は広告にも表示するよう努めること
- 面談が必要であることを明記する努力義務
- 「過払い請求だけ対応」など、誤解を招く広告は禁止
6. 弁護士とのやり取りは書類で保管を!
以下の書類は、後々のトラブル防止のためにも必ず保管しておきましょう。
- 委任契約書
- 精算書
- 報告書
まとめ
債務整理は人生を立て直すための大切な一歩。
費用面で不安を感じる方も多いですが、日本弁護士連合会のルールにより、報酬の上限や弁護士の義務がしっかりと定められています。
安心して依頼するためにも、報酬内容を事前に確認し、信頼できる弁護士を選びましょう。